こんな夜だから書庫に行こう

はてなから感想の保管作業終了!!
現在、10年ほど前の一言感想をアップしています。
<< August 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

Profile

Selected entries

Category

Archives

Links

BlogPeople

STARLIGHT mini

あわせて読みたい

あわせて読みたい

RECOMMEND

RECOMMEND

RECOMMEND

RECOMMEND

Comment

Trackback

Other


  • Admin
  • RSS1.0 | Atom0.3
  • Template by Dsh+
  • Powered by JUGEM

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

2009.09.29 Tuesday | - | - | -

北川歩実『運命の鎖』

 優秀な物理学者だった志方清吾。だが、彼は二十数年前、精子バンクに自分の精子を残して失踪してしまった。しかも、彼の父親は50%の確立で遺伝する遺伝病「アキヤ・ヨーク病」で亡くなっていたのだ。残された彼の子供たちは、人生の岐路に立たされていた・・・

 連作短編集。著者お得意のサイエンス・ミステリです。
「愛の結晶」
 探偵に父親探しを依頼した翔は、見つかるや否や刺してしまった・・・いきなりややこしいどんでん返しの連発。理解できるまで何度でも読み返してください。
「あなたの明日」
 人工授精で生まれ育ての親の実子として育てられた里佐は、遺伝子検査を依頼したが・・・これまたクルクル変わる展開がおもしろい。シンプルな分これがベストか。
「子供の顔」
 人工授精で生まれ、すでに子供も出産している夏美だが・・・遺伝といえば「これ」なのですが、すっかり忘れていたので驚きです。まあ、エゴですね。
「大切な人」
 君保のもとに、父親を断定する男・越沼が現れた。彼は君保の亡母とは知り合いだったという・・・いよいよ志方の秘密が明らかになってくるのですが、もう何がなんだか。混乱してしまいます。
「運命の鎖」
 志方の子供たちは、試料をまとめて検査することでリスクを分散しようと試みる・・・とうとう明らかになる遺伝の有無。ですが、あっさりしすぎていて尻すぼみです。

 とにかくどんでん返しの連続で、これでもかこれでもかとばかりに新しい事実が発覚し、様相が一変するのです。遺伝病や人工授精に関する話なので、世間体を慮ってか関係者もなかなか知っているすべてを話そうとはしません。隠し事はもちろんのこと、偽名や偽証も出てきます。しかも、真実を聞かされてもそれが真実とはわからないからなおさら。人間関係も実の親子から遺伝上の親子、戸籍上の親子までさまざま。
 もちろん、子供たち自身の遺伝子を調査してしまえば話は簡単なのですが、できることなら志方がアキヤ・ヨーク病の遺伝子を持っていない(=子供にも遺伝していない)ことを確認して済ませたいと考えているので、なかなか踏み切れないのです。
 各編を振り返ると、前半の3編は切れ味が鋭く、どんでん返しの効き目が強い作品です。どれも騙し、騙されという感じで、その駆け引きも楽しませてくれます。
 ですが、後半に入り志方捜しの色彩が濃くなるとどうでしょうか。途端に面白みが失せてしまったように感じます。最後もあれあれという間にあっさり終わってしまって尻すぼみ。前半の切れ味が印象深いだけに、がっかりしてしまいました。

収録作:「愛の結晶」「あなたの明日」「子供の顔」「大切な人」「運命の鎖」
2007年12月14日読了
2007.12.18 Tuesday 12:10 | か行(その他) | comments(0) | trackbacks(0)

門井慶喜『人形の部屋』


人形の部屋 (ミステリ・フロンティア 39)
Amazonで購入
書評/ミステリ・サスペンス


 かつて旅行会社に勤務しツアーのプランを立てていた八駒敬典は、「歩く百科事典」「電源のいらない検索サイト」などとも呼ばれる博学だったが、今は「家主」と称する専業主夫。中学生になる娘のつばめとともに知識を駆使し、身のまわりに起こる謎を解いていく・・・

 「キッドナッパーズ」で第42回オール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー作『天才たちの値段』で高い評価を得た門井慶喜さんの第2作。 博学で知られる人物を主人公に据えているだけに、ウィットがあり、蘊蓄で満ち溢れた雑学事典のような作品集です。
 しかしながら、一言で表現すれば衒学的。すなわち、はじめに蘊蓄ありきと思われてならないのです。
 例えば、主人公の八駒敬典は以前旅行会社に勤務していたわけですが、その設定が活かされていると思われるのは表題作「人形の部屋」でのフランス人形に関する蘊蓄ぐらい。「外泊1 銀座のビスマルク」で披露される蘊蓄も、彼自身の出身地に絡められ、せっかくのチャンスを逃してしまっている印象。別に観光地を巡るようなトラベルミステリーにしろというわけではありませんが、せっかくの設定なのですからもう少し活かしようがあったのではないかと思うことしきり。「博学」という部分ばかりが強調され「元旅行会社勤務」という部分が忘れ去られたまま蘊蓄を披露し続けるため、結果として鼻につくこともしばしば。

 また、本作は5つの短編で構成された短編集ですが、中心になるのはそのうち長めの3作。この3作がおもしろくないというわけではないのですが、いずれも冗長に感じられ、やや切れ味を失っているのが残念。むしろ幕間のような短めの2作のほうが切れ味を感じることができます。決して現実的とは思えないのですが、2作とも万年筆や奈良筆を買い求めようというところで見知らぬ男に相談を持ちかけられます。「外泊1 銀座のビスマルク」は特に蘊蓄と謎解きがきれいに組み合わされた例ではないかと。
 決して派手ではありませんが、主人公同様静かで落ち着いた雰囲気の作品集です。

収録作:「人形の部屋」「外泊1 銀座のビスマルク」「お花当番」「外泊2 夢みる人の奈良」「お子様ランチで晩酌を」
2007年11月5日読了
2007.11.06 Tuesday 17:17 | か行(その他) | comments(0) | trackbacks(0)

黒田研二『カンニング少女』

カンニング少女
カンニング少女黒田 研二

文藝春秋 2006-04
売り上げランキング : 301516

おすすめ平均 star
star感動〜!
starさらりと一気読み
star青春小説

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 姉の事故死には、どうやら真相を知る人が通っていた大学にいるらしい。そう判断した玲美は超難関・馳田学院への入学を決意する。だが、入学への道はあまりにも険しい。玲美は愛香、隼人そして杜夫の3人に相談をしてみた。そして出された結論はただひとつ、カンニングしかない。カンニング大作戦が始まった・・・

 クロケンさんということでバリバリの本格を想像していたのですが、そんなことはなくて、ずいぶん変化球でした。
 続きがどうなるのか、気になって気になって仕方がない作品でした。でも、これどうなんでしょう。

 一番不満だったのは、鈴村女史のパートが生かされているとは到底思えなかったことです。
 正義感が強く、曲がったことや不正を許すことができない人物だということはよくわかるのです。ですが、カンニングに対抗する処置をするだけならば、その人のことにこれだけの部分を割く必要はないでしょう。むしろ、流れを寸断させてしまった感じ。
 逆に、これだけ割いた人物のなですから、もっと大立ち回りをさせて直接玲美たちと対峙してもよかったはず。その辺がなんとも中途半端で残念でした。

 カンニングと言うのは当然不正行為ですし、馳田学院へ入りたい理由もイマイチすっきりしないのですが、それでも玲美や杜夫たちを応援したくなってしまいます。
 ハイテクを活かしたカンニング方法は驚き。僕たちの頃にはちょっと考えられないなあ。
2007年6月23日読了
2007.07.02 Monday 13:43 | か行(その他) | comments(0) | trackbacks(0)

木本雅彦『声で魅せてよベイビー』

声で魅せてよベイビー
声で魅せてよベイビー木本 雅彦 ヤス

エンターブレイン 2007-01-29
売り上げランキング : 38436

おすすめ平均 star
star面白いですよ。
starそのまんま

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 孤高のハッカーを自称する高校生広野は、同人誌の即売会で腐女子を自称する声優の卵姫野沙奈歌と出会う。しかも、成り行きで沙奈歌の恋人を装うことになってしまった。まったく趣味も考え方も違う二人は成り行きのまま恋人を演じ続けるが・・・

 第8回えんため大賞佳作受賞作。
 読んでいてなかなかおもしろかったのだけれど、これってよくよく考えると孤高のハッカーと腐女子で声優の卵っていう要素を取っ払うと、いたってよくある典型的なボーイミーツガールじゃないかと。ひょんなことから出会った二人が恋人を演じ・・・っていう。
 だからといってこの作品の評価が落ちるわけでなく、むしろそのパターンでおもしろく読ませているということが重要なのではないかと。

 散りばめられた子ネタの数々、テンポのいい文体、無理のない展開となかなかで、その中にハッカーと声優の卵という要素が上手く絡められていて納得の出来。特に、広野の抵抗はハッカーとしての知識と技術だけでなく、最終的に自分の体を使っているのがよかったです。もしそうでなかったらイメージは全然違っているのでは?
 あと、沙奈歌も言っているけれど「Y」とか「N」とか答えるのはどうかと思うのです。チャットじゃないんだし、違和感がありすぎます。
 コンピュータやアニメについて詳しかったらもっと楽しめたかな。
2007年5月16日読了
2007.05.18 Friday 16:54 | か行(その他) | comments(0) | trackbacks(0)

北國浩二『夏の魔法』

夏の魔法
夏の魔法北國 浩二

東京創元社 2006-10-24
売り上げランキング : 134699

おすすめ平均 star
star悔恨の極致

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 夏希は帰ってきた。9年前、ヒロとともにあの輝かしい夏をすごした風島へ。しかし、22歳になった彼女は早老症という遺伝性の難病により、年老いた老婆のように姿を変え、体を末期がんに蝕まれていた。人生最後の思い出のために偽名を使って滞在した夏希。だが、彼女の前に現れたのは、風島でアルバイトをしている立派な青年になったヒロ、そして若く美しい沙耶の姿だった。

 あまりにも切なく、哀しく、そして重い物語。
 ミステリ・フロンティア第28回配本作品。
 輝かしい夏の思い出と現実との狭間にいる夏希の苦悩と葛藤を描く前半と、衝撃的な出来事を描く後半。賛否両論ありそうな気がしますが、前半のような話が続いて幸福な結末、あるいは静かな結末を迎える、というような話だったらそれはありふれた難病ものの物語で、「感動した」「いい話だった」となるのでしょうが、そうはいかないのがこの『夏の魔法』。あの後半であの結末だからこそ、『夏の魔法』はありふれた物語から一段上に昇華しているのです。
 前半の夏希の嫉妬や葛藤は、本来であれば今自分が手にしているはずであった夢や希望、若さ、美しさなどから生まれたもの。読み手としてはそれを序盤から理解しているだけに、実際に年老いた人が抱くであろう物とは異なるそれらの感情を理解し、そして同情を禁じえないのです。
 本質的には残酷な不信と純愛の物語だと思います。すべてを把握した夏希の衝撃は計り知れません。物語のすべてはこの衝撃を作り出すために存在しているかのようです。

 もし時間が許すのであれば、もう一度読み込んで夏希の心の奥までつまびらかにしたいような恋愛小説。北國浩二という作家を追いかけてみるのもいいかもしれません。
2006年12月11日読了

2006.12.11 Monday 00:00 | か行(その他) | comments(0) | trackbacks(0)