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評価:
道尾 秀介
講談社
¥ 1,785
(2008-07-23)
Amazonおすすめ度:
何かもの足りない
期待しすぎたかも・・・
いまひとつ
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詐欺を生業とするタケさんとテツさんは、詐欺が取り持つ縁で生活を共にする。やがて二人の共同生活に割り込むことになったのはまひろという少女。彼女もまた詐欺やスリで生活していただけでなく、姉とその恋人を連れてきた。5人になった擬似家族は過去と訣別するために策を講じる・・・
第140回直木賞候補作。
道尾さんの作品を読むのはこれで5冊目。今まで読んだ作品の主人公はいずれも子供から青年といったところでした。そこで本作の主人公タケさんの設定を読んで、期待よりも不安が先立ちました。タケさん、中年の詐欺師ですから。「これ、道尾さんらしくないんじゃない?」と。もちろん、そんなの杞憂に終わりましたが。
最初から登場人物たちが置かれた状況が悲惨で、思わず目を背けたくなったりもしました。例えば、タケさんやテツさんの家族のこととか。ただし、それもおもに前半のこと。中盤から後半にかけては、ヤミ金業者に詐欺師たちが己の知恵と経験を生かして挑むという勧善懲悪?の展開。それも明るくユーモラスで、読んでいても加速がつきました。
すべてが終わるまでを顧みると、さすがにご都合主義的に思える部分もあることは否定しません。これだけ大きな目論見がうまくいくとも思えませんし。
しかしながらそういった部分を除けば、張り巡らされた伏線がしっかりと機能した作品にほかなりません。道尾さんの得意技が炸裂、というわけです。もしかしたら、あなたが読んで違和感を覚えたあのシーンも、あの人も、実は伏線かもしれませんよ。
コン・ゲームを題材にした傑作といえば『紳士同盟』を思い出しますが、『カラスの親指』はこれに勝るとも劣らぬ作品でしょう。惜しくも直木賞の受賞を逃しましたが、早くその選評を読んでみたいです。
2009年1月17日読了
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