|
評価:
坂木 司
新潮社
¥ 1,680
(2008-10)
Amazonおすすめ度:
孤独のなか、闘いは続くが……
静かな余韻が心地よい
|
昼間の姿は仮の姿、夜の姿が真の姿。四人は、それぞれが最前線で死闘を繰り広げるスパイ。天文部員として観測会のために集まる屋上こそ、四人の安息の地。そしてこの物語は、高三の一年間における四人の壮絶な戦いの記録・・・
何のことだかよくわからないようなあらすじですが、ジョー、ゲージ、ギィ、ブッチというコードネームを付け合った四人の高校生の、家庭からの脱出とアイデンティティの確立を賭けた戦いの短編集です。
●
「季節外れの光」
4月なのに、裏庭の池で蛍の光を見たという。生物の教師が蛍を放したというが・・・ミステリとしては非常に薄味ですね。光るものって言えば他にはなかなか思いつかないですし。なんだか、見ちゃいけないものを見てしまった気分。
●
「スペシャル」
定期的にピザのアラカルトを頼む二人の人物。男性はいつも盛り沢山、女性はシンプル・・・これはどちらも思いつかない理由でした。いや、こんなことする人はきっといないとは思いますが。
●
「片道切符のハニー」
文化祭。手芸部の出す店で「あなたには売らない」と言われたジョー。どうして・・・これまた迷う余地が少ない謎。ひどい奴がいますね。明らかにやりすぎな文化祭。毅然としたジョーが輝いて見えます。
●
「化石と爆弾」
冬の日、薄着で白いぬいぐるみのようなものを手にした女の子と出会ったゲージ。焼却炉の場所を聞かれたが・・・次への一歩をどのように、どちらへ踏み出すか。多くの人が迷うことですが、やはり自分を捨ててはいけないですよね。それはぬいぐるみの彼女だけでなく、天文部の四人も、そして僕たちも同じこと。
●
「それだけのこと」
卒業した四人。ブッチからのメールで集まった場所は、養蜂に携わる彼の寝座・・・後日談。ともに戦った戦友たちの集い。
あらすじから物騒な物語を想像していたのですが、やはりそんなことなかったですね。坂木さんらしく、それでいて今までとはちょっと違うというか。コミカルなキャラクターをも扱い、しかし根底にあるテーマはちょっと重い。そのバランスが絶妙でした。
四人の戦闘の理由は、傍から見れば他愛のないことかもしれません。でも、長かった戦闘の末にとりあえずの勝利を勝ち取った四人からやすらぎと安堵を感じ取ったのは、きっと僕だけではないはずです。
そうそう。夜、星空を見上げながら学校の屋上で食べるものは何でもおいしいんですよ。たとえカップラーメンでも。
収録作:「季節外れの光」「スペシャル」「片道切符のハニー」「化石と爆弾」「それだけのこと」
2008年12月12日読了
⇒ 藍色 (05/05)
⇒ めたぼ (07/15)
⇒ 黒きとう (07/01)
⇒ まさ☆ぴ (06/25)
⇒ 豚村 (06/12)
⇒ たけのこ (06/09)
⇒ 紳士28号 (06/02)
⇒ 最近の流行 (05/12)
⇒ 佐藤君 (03/27)
⇒ 志波康之 (01/14)