誰もわたしを愛さない
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ミステリ・サスペンス
おすすめ平均 ひさびさに直球のシリーズ作
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桜の花びらが舞う季節。打ち合わせで月刊EYES編集部を訪れたフリーライターの柚木草平は石田に代わる担当編集者として小高直海を紹介された。同時に依頼されたのは渋谷のラブホテルで起きた女子高生殺人事件の特集記事。請け負ったものの、柚木にとって食指が動かない事件だった。
あなたは、あなたの家族がどんなことをしているか、知っていますか。
あなたの家族は、あなたがどんなことをしているか、知っていますか。
子どもたちがそれぞれに個室を持つ家庭が増え、携帯電話を使うようになったのは最近のことではないけれど、それにつれて年々家族間の交流がなくなる傾向にある気がします。
今回柚木が追う事件もまたそんな家庭が出てきます。「うちの子に限って」「兄弟と言えども他人」「父親なんて」というような家庭です。
いかにも現代らしい舞台での、現代らしい事件。現代らしいアイテムも使って巧みに時代性を出しています。ただしそのアイテムはナイキのエアマックス96。そう、これは今から10年ほど以前の作品なのです。
本作は『彼女はたぶん魔法を使う』から始まる柚木草平シリーズの第4弾。このシリーズの最大の魅力は、なんと言っても柚木の気障な台詞、一人語りだったりします。今作でもそれは健在。しかも、洒落た台詞を決めておきながら、予期せぬ切り返しに思わず言葉に詰まったりしています。この辺が柚木の弱みであり、同時に作品としての強みでしょうか。
ミステリとしては比較的早い時点で犯人にあたりをつけることもできるでしょうし、必ずしも謎解きに重点が置かれていないとも思われる作品です。とは言っても、やはり謎解きにも力が入っている方がより魅力的でしょう。それに、創元推理文庫はともかく、旧版元の頃の帯でのネタバレは読み手の興味を削いでしまいそうです。講談社文庫版の帯を確認して唖然としてしまいました。
創元推理文庫でよみがえった柚木草平シリーズ。まとめ読みするなら今でしょうか。
ところで、解説で話題になっている「なぜ『誰もわたしを愛さない』は後回しになったのか?」という謎ですが、来月刊行予定の短編集『不良少女』や、現在「ミステリーズ!」誌に連載中の『捨て猫という名前の猫』と小高直海ものを続けたかったということではないでしょうか。
2007年10月7日読了(再読)
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