文化祭に出すというミステリ映画。だが、脚本担当が倒れたため映画の撮影は中断したままという。奉太郎たち古典部は、未完のミステリー映画の犯人あてを依頼されてしまう・・・
『氷菓』に続く古典部シリーズの第2作。ライトノベルという枠組み、そして文庫本250ページほどの紙幅でありながら、「バークリー『毒入りチョコレート事件』への愛情と敬意をもって書かれ」たという推理合戦が秀逸。推論が出される度にその採否を検討するという過程の繰り返しがおもしろい作品です。
また、探偵役である奉太郎の探偵としての自意識を取り上げていたり、ホームジストである里志に探偵小説史の一部を語らせたりといろいろな趣向が盛り込まれていて、推理以外の部分にも力が入れられています。きっと、古典的な名作を読んでいる人ほど楽しめることでしょう。ちなみに僕は『毒入りチョコレート事件』だけでなく我孫子さんの『探偵映画』、綾辻さんの「館シリーズ」も未読ですので・・・
もちろん、古典部のメンバーは本作でも活躍。探偵役の奉太郎は当然ですが、キャラクターとしてはなんといっても千反田。あいかわらずのちょっとはずれた浮世離れした言動で強烈な印象を残してくれます。
ミステリ好きにはミステリとして、ライトノベル好きにはライトノベルとして楽しめる良作です。
関連作:『氷菓』『
クドリャフカの順番』
2005年7月23日読了
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