こんな夜だから書庫に行こう

はてなから感想の保管作業終了!!
現在、10年ほど前の一言感想をアップしています。
<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

Profile

Selected entries

Category

Archives

Links

BlogPeople

STARLIGHT mini

あわせて読みたい

あわせて読みたい

RECOMMEND

RECOMMEND

RECOMMEND

RECOMMEND

Comment

Trackback

Other


  • Admin
  • RSS1.0 | Atom0.3
  • Template by Dsh+
  • Powered by JUGEM

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

2009.09.29 Tuesday | - | - | -

北村薫『野球の国のアリス』

評価:
北村 薫
講談社
¥ 2,100
(2008-08-07)
Amazonおすすめ度:
お勧めジュブナイルノベル
どこまでも爽やかな読後感
 満開の桜の下で、彼女は不思議な話を始めた。昨日までおかしなところで投げていた、と。少年野球チームのエースでありながら、小学校卒業にあわせて野球をやめざるを得なかった彼女は、いったいどんなところで投げていたというのか、どんな試合をしていたのだろうか・・・

 ミステリーランドの最新作は、ミステリではないと思うけれど、なんともミステリアスで北村さんらしい作品。野球への愛情に満ち溢れています。
 また宇佐木さんという名前、お茶会や赤の女王、あるいは本書のタイトルを見てもわかるように『鏡の国のアリス』をモチーフにした作品です。
 もう野球ができないはずのアリスに与えられた最後のチャンス。このチャンスにアリスが心の底から野球を楽しんでいる様がとても心地よく感じられます。そしてこの野球からの卒業こそが、アリスにとっての大人への第一歩のような気がします。
 そういう意味で、ちょっとした出来事でチャンスを失いかけたアリスに、再び、そして最高の舞台が与えられたのがとても印象的でした。
 女房役で少し大人の兵頭や天才とも称されるスラッガー五堂、鏡のこちら側ではおとなしかった安西など、アリスの周囲を彩る仲間たちも個性的でおもしろいです。
 ところどころに差し挟まれるジョークも思わずクスッと笑ってしまいます。

 あべこべとなった鏡の世界で、アリスは野球に対するおかしな価値観と対峙します。この一件で、この世界での考え方が少しでも変わるのでしょうか。確かに気は晴れるかもしれません。しかし、そんなことよりもアリスたちが野球を楽しんだということの方がきっと重要です。
 野球に興味のない人、ルールを知らない人にもオススメ、と言いたいところですがどうなんでしょう?
2008年9月13日読了
2008.09.16 Tuesday 19:28 | か行(北村薫) | comments(0) | trackbacks(0)

北村薫『空飛ぶ馬』

評価:
北村 薫
東京創元社
¥ 714
(1994-03)
Amazonおすすめ度:
男性にとって理想的な女性の目から見た日常
のんびりムード
温かさのあるミステリー♪
 加茂教授の推薦で校内雑誌のインタビューに出ることになった《私》。その相手は大学の先輩にあたる噺家春桜亭円紫。彼は若くして師匠の名を継いだように才能に秀でただけでなく、人の話からたちまち謎の真相を導き出す名探偵でもあった・・・

 12年ぶりの再読。何を隠そう春桜亭円紫師匠こそ、僕をミステリに引き込んだ名探偵です。
「織部の霊」
 子どもの頃、加茂教授は叔父の家で古田織部が腹を切る夢を繰り返し見たというが・・・初っ端から完成された世界。静かでやさしくやわらか。
「砂糖合戦」
 喫茶店に入ってきた少女たちは砂糖壷からスプーン7.8杯もの砂糖をカップに入れた・・・喫茶店での何気なく見える行動から明らかになっていく悪意がたまりません。
「胡桃の中の鳥」
 円紫さんから蔵王でのチケットをもらい、正ちゃんたちと観光した《私》。翌日、江美ちゃんの車の座席カバーがなくなった・・・どちらかといえば正ちゃんと江美ちゃんの顔見せの色彩が強い作品。カバーがなくなった理由よりも、その後どうなったのかが気になります。
「赤頭巾」
 歯医者で会ったほくろさんが言うには、日曜の夜には公園に赤頭巾が出るという・・・きっと《私》にとっては受け入れたくない真相。共感する人間の薄皮に包まれていた生々しい部分を見せられたとき、それでも同じ感情を抱き続けることができるのでしょうか。
「空飛ぶ馬」
 クリスマスに幼稚園に寄贈された木馬が消えていた? 戻されているがあの時は確かにいなかったのだ・・・なんともあたたかい気持ちにさせてくれます。悪意や毒もいいですが、「日常の謎」の王道はこういった作品ではないでしょうか。

 ミステリにおいて「日常の謎」と呼ばれる1つのジャンルが形成されるきっかけとなった作品集。多くのフォロアーを生み出しました。
 随分久しぶりに読んだのですが、以前に読んだときよりも、人間らしさや悪意をより強く感じました。悪意とか毒の部分は『盤上の敵』で強調されていた印象があったのですが、デビュー作でも記憶していた以上に強かったようです。記憶は美化されていきます。
 また、連作短編集ではあるけれど、最後に世界観をひっくり返すような何かがあるわけではありません。ただ、そこには確実に各編を繋ぐものがあり、それが時の流れとか人の成長とか、あるいはちょっとした物事の進展で表されています。
 全体に謎以外の部分に筆が費やされているように見えますが、そういう中にもミステリとして読み捨てられない部分があり、油断なりません。オススメ。

収録作:「織部の霊」「砂糖合戦」「胡桃の中の鳥」「赤頭巾」「空飛ぶ馬」
関連作:『夜の蝉』『秋の花』『六の宮の姫君』『朝霧
2008年4月10日読了(再読)
2008.04.10 Thursday 19:30 | か行(北村薫) | comments(0) | trackbacks(0)

北村薫『1950年のバックトス』

評価:
北村 薫
新潮社
---
(2007-08)
Amazonおすすめ度:
北村薫印の小品集。表題作がバツグンに素晴らしかった!
1冊を通して様々に楽しめる
 「小説新潮」誌に掲載された掌編を中心に23作集めた作品集。
 ちょっと怖い話、くすっと笑わせてくれる話、心があたたかくなる話など23も作品があると様々なのですが、どれも北村印の判が打たれているかのようで、静かで淡々と語られる中に味わいや深みが感じられます。取り上げられたエピソードへの目のつけどころが北村さんらしいかもしれません。

 ギャップがユーモラスでおもしろい「百合子姫・怪奇毒吐き女」やシンプルでかわいらしい「雪が降って来ました」なども印象に残りましたが、やはり読み応えがあったのは後半のちょっと長めな作品たちでした。
 表題作である「1950年のバックトス」は孫の少年野球の試合を観に行った祖母の話。祖母が語りだしたのは思いもかけなかった過去の職業のこと。当時のことが目の前の出来事のようにいきいきと描かれています。想像できる結末でしたが、あたたかな気持ちにしてくれます。
 また、最後の「ほたてステーキと鰻」は『ひたがた流し』の後日談。あの人たちはこうして生きているのだなと安心させてくれるます。思い入れのある登場人物たちと再会させてくれるというのはうれしいものです。

収録作:「百物語」「万華鏡」「雁の便り」「包丁」「真夜中のダッフルコート」「昔町」「恐怖映画」「洒落小町」「凱旋」「眼」「秋」「手を冷やす」「かるかや」「雪が降って来ました」「百合子姫・怪奇毒吐き女」「ふっくらと」「大きなチョコレート」「石段・大きな木の下で」「アモンチラードの指輪」「小正月」「1950年のバックトス」「林檎の香」「ほたてステーキと鰻」
関連作:『ひとがた流し』『七つの黒い夢』(「百物語」収録)
2007年10月4日読了
2007.10.05 Friday 18:38 | か行(北村薫) | comments(0) | trackbacks(0)

北村薫『玻璃の天』

玻璃の天
玻璃の天北村 薫

文藝春秋 2007-04
売り上げランキング : 5128

おすすめ平均 star
star遠い日の風(kaze)も北村薫のこの新作をやはり読んだのでしょうか
star熱さをもつきれいなミステリー
star事実に裏打ちされた見事な情景描写

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 北村さんの新作は、『街の灯』に続くシリーズ第2作です。昭和8年を舞台に、今回もベッキーさんが控えめに大活躍します。

●「幻の橋」
 犬猿の仲の兄弟。何年もいがみ合っているが、そのきっかけはイマイチハッキリしない。しかも、孫どうしが惹かれあっているという・・・まさにロミオとジュリエット。死亡を伝える新聞記事となくなった浮世絵という数十年離れた2つの謎が、真相で結び付けられたことがなかなか印象深いです。
●「想夫恋」
 英子の学友綾乃が失踪した。彼女は暗号の記された手紙を残しており、その送り主は英子が綾乃との間で使っていた別名になっていた・・・それなりの知識がないと解けない暗号。北村さんらしいと言えばらしいのかな。
●「玻璃の天」
 建築家の乾原が建てたという末黒野邸のお披露目に招かれた英子。だが、ステンドグラスの天窓を破って一人の男が墜落してきた・・・トリック云々よりもベッキーさんの過去が明らかになることのインパクトが大きいですね。

 読み進めるにしたがって徐々に戦争という暗黒の時代へ向かって行くのがよくわかる3編。その象徴が段倉という男でしょう。この男の登場も退場も当時の時代背景と密接に結びついていて、この1冊を象徴する重要なキャラクターであることは間違いありません。それだけに、ベッキーさんとのやりとりなど快哉を叫びたくなりました。
 全体の印象として暗くなっていく時代背景であるとか、風俗だとか、そういったものが中心に書かれた印象が強い中で、ミステリもしっかり生きています。あの暗号はちょっと解けないですけど。「玻璃の天」などちょっとした館ものみたいですね。
 やっぱり、ホンの少しも無駄のないようなトリックとロジックだけのミステリよりも、物語性が高く全く関係ないようなことまでも含めて描いていくミステリの方が、北村さんには合っている気がします。まあ、今までの作品ほとんどがそういった作風だったと思いますが。
 このシリーズは3編×3作だとどこかで聞いた気がします(間違っているかも)。次回作はもう少し早く読みたいです。

収録作:「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」
関連作:『街の灯
2007年6月15日読了
2007.06.21 Thursday 13:49 | か行(北村薫) | comments(0) | trackbacks(0)

北村薫『ひとがた流し』

ひとがた流し
ひとがた流し北村 薫

朝日新聞社 2006-07
売り上げランキング : 1661

おすすめ平均 star
star人から人へと<思い>がリレーされる物語
star心に余韻の残る作品
star流れるように

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 千波、牧子、美々の3人は20年来の親友。作家の牧子は受験を控えた娘のさきと2人暮らし。美々は写真家の類と再婚しサポートに回っている。そして独身の千波はアナウンサーとして円熟期を迎えようとしていた。だが、千波が朝のニュース番組のメインキャスターとして抜擢されることが決まった矢先に悲劇はやってきた。

 この『ひとがた流し』は北村さんにとってはじめての新聞連載小説だそうです(朝日新聞)。

 正直なところ、途中まではこの取り止めのない話がどこへ行くのだろうと、疑問に思わずにはいられませんでした。小さなエピソードが無数につながっていく感じ。それはありふれた日常の1コマを切り取ったかのようで、静かで平穏な毎日です。
 ですが、中盤以降の静かな盛り上がりや緊張感は、落ち着いた筆致でありながら深い感動を呼び起こします。特にエレベータのシーンなどは・・・
 人の死、特に病を扱う小説は苦手だったりします。どうしても目頭が熱くなるのを抑えられないから。

 家族愛、友情、恋愛・・・そういったものから人と人とのつながり、あるいは自分の生を切実に願う人の存在がどれだけ大切なものなのか、それを北村さんのあたたかい視線で見つめた物語です。なんともいえないような切なく、そしてやさしい余韻を残してくれます。
2006年9月10日読了
2006.09.10 Sunday 00:00 | か行(北村薫) | comments(0) | trackbacks(0)