図書館を中心舞台とした「日常の謎」短編集。『
千年の黙 異本源氏物語』で第13回鮎川哲也賞を受賞した作者の受賞第1作。
新米司書今居文子が勤める秋庭市立秋葉図書館は町外れの僻地に建つ閑散とした図書館。司書として抜群な知識と推理力を持つ能勢、冷静でしっかりした日野という二人の先輩、そして世話焼きで図書館用地も提供した秋葉などの周囲でちょっとした事件が起きていく・・・
●「霜降−花薄、光る。」
図書館で閉館後もこっそり居残ろうとする子どもたちが頻発する。その一方で、急に不可解な忘れ物が増え出した。知らなければ解らないかもしれないですが、知らなくても楽しめます。
●「冬至−銀杏黄葉」
比較的人が少ない児童洋書の棚で水曜日に限って誰かがいたずらしていく。どうやら暗号のようではあるが・・・図書館ならではですね。
●「立春−雛支度」
コピー機に残されていた利用者と貸出本のリスト。しかし個人情報を図書館でリスト化するはずもなく、しかもリストに名前がある人たちは図書館を利用したことがないという・・・おそるべし個人情報漏洩。
●「二月尽−名残の雪」
大雪の日、能勢の機転で文子は秋葉邸で一晩厄介になる。そこで秋葉から子どもの頃に見た雪女の話を聞かされる。時代背景と真相がうまくまとめられています。
●「清明−れんげ、咲く」
図書館のまわりのススキが刈り取られ、代わりにレンゲソウの花が咲きそろった。そんなころ、書棚に廃校になった中学校の蔵書が紛れているのが見つかった。能勢の気遣いが後味を良くしています。
全体としてきれいに、繊細にまとめられたという印象。『れんげ野原のまんなかで』というタイトルのせいかも知れません。優しい気持ちと善意に囲まれた日当たりのいい図書館といった感じ。
ただ、それだけに強い印象、インパクト、サプライズに欠けている気もします。4〜5話はせっかく図書館という制約から飛び出したのだから、その辺をもっと押し出してほしかったです。
謎そのものは人間の心理に焦点が当てられたものが多く、その点は面白かったです。
このままシリーズ完結ということもないと思うので、次回作に期待です。
収録作:「霜降−花薄、光る。」「冬至−銀杏黄葉」「立春−雛支度」「二月尽−名残の雪」「清明−れんげ、咲く」
2005年4月5日読了
⇒ 藍色 (05/05)
⇒ めたぼ (07/15)
⇒ 黒きとう (07/01)
⇒ まさ☆ぴ (06/25)
⇒ 豚村 (06/12)
⇒ たけのこ (06/09)
⇒ 紳士28号 (06/02)
⇒ 最近の流行 (05/12)
⇒ 佐藤君 (03/27)
⇒ 志波康之 (01/14)