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評価:
太田 忠司
幻冬舎
¥ 1,785
(2008-07)
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「愛知県警の鉄の女」などと畏れられる京堂景子警部補。どんな難事件も解決してしまう凄腕だが、家事はすべてイラストレーターで主夫の新太郎が取り仕切り、景子を支えていた。そして、実は新太郎はほかの方法でも景子を支えていたのだ。安楽椅子探偵として・・・
『ミステリなふたり』に続く京堂夫妻ものの短編集。
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「ヌイグルミはなぜ吊るされる?」
吊るされた死体の周りには、いくつものヌイグルミが吊るされていた・・・このほどほどの奇妙具合は、最初の事件に最適かも。
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「捌くのは誰か?」
殺された女性は料理が苦手。だが、捌いた刺身とともに発見され・・・誰でも簡単にできるわけではないのがうまいですね。
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「なぜ庭師に頼まなかったか?」
主人が殺害された豪邸では、松の枝が不恰好に伐られ・・・ムダなものがないスマートな作品。
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「出勤当時の服装は?」
堅物と思われた男は、女装した死体として見つかった・・・whyやwhereのストレートな連鎖が楽しかったです。
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「彼女は誰を殺したか?」
橋の上で一人の痴漢を撃退した女性。ところが、川からは死体がふたつ・・・景子と新太郎のちょっとした推理合戦がおもしろいです。
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「汚い部屋はいかに清掃されたか?」
ゴミ屋敷で清掃業者が殺された。ゴミひとつない部屋で・・・あの一言が!
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「熊犬はなにを見たか?」
町を自由に散歩する大きな犬を飼っていた、嫌われ者の男が殺された・・・あの一言が! その2。何気ないところに隠された手がかりが巧み。
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「京堂警部補に知らせますか?」
スポーツジムで汗を流す新太郎。そこへやってきたのは景子の同僚たち・・・安楽椅子から飛び出した新太郎が活躍する異色作。
前作は「〜殺人事件」というタイトルの短編が並んでいましたが、今回は最後に「?」、それも有名な作品のパロディになっています。さらに『誰が疑問符を付けたか?』。遊んでますね。それでもちゃんと話の内容に関連しているところがすごいです。
作品の構造自体は前作とほとんど同じ。あいかわらず新太郎の推理が冴えます。ただ、全体的にやや強引というか、真相がほかにあってもおかしくないような割り切れなさが残りました。一編ごとの短さが影響しているのかもしれません。
軽快かつユーモラスな作品が並んだ短編集。二面性を持つ景子さんはもちろん、登場するキャラクターがコミカルなので、陰惨な事件でも吹き飛ばしてくれます。ドラマ化してもおもしろいかも。でも、30分枠かな。
収録作:「ヌイグルミはなぜ吊るされる?」 「捌くのは誰か?」「なぜ庭師に頼まなかったか?」 「出勤当時の服装は?」 「彼女は誰を殺したか?」「汚い部屋はいかに清掃されたか?」 「熊犬はなにを見たか?」 「京堂警部補に知らせますか?」
関連作:『
ミステリなふたり』
2008年9月25日読了
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